ラン・オールナイト 映画レビュー

子供の喧嘩はありふれているが、親にとっては厄介なものだ。親同士の関係も、一気に険悪化する可能性もある。ロマン・ポランスキー監督の『おとなのけんか(2012)』でも描かれているように。『ラン・オールナイト』の場合は、喧嘩なんて生易しいものではない。生きるか、死ぬかというレベルで、親同士の関係も限りなく悪化していく。


元はといえば、双方の親は固い絆で支えあう友人同士だった。ショーン(エド・ハリス)のほうは、マフィアのボスにのし上がり、ジミー(リーアム・ニーソン)は、凄腕の殺し屋となった。ショーンにとってジミーは、なくてはならない存在だったし、ジミーのほうもショーンを信頼しきってきた。どんな命令でも応じてきた。


ところが、子供が関わり、殺人が絡むとなると、問題は別次元となる。なりふり構わずに相手を狙っていくことになる。ジミーにとっては、ショーンと敵対するのは、自分の人生を否定することに近い。しかし彼は、心の中でも立ち止まらない。殺しの技術を生かし、疎遠だった息子を生き延びさせることだけを目的に、動き続ける。


(c)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
(c)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

一方、息子を殺されたショーンは哀れだ。決して出来がよい息子ではなかった。そのうちまともになるのではと願ってきたのに、決して叶わない。


感情過多になりかねないストーリーを、シャープな表現、獰猛な印象で描いたのは、ジャウマ・コレット=セラ監督。リーアム・ニーソンとは、『アンノウン』、『フライトゲーム』でも組んでいる。今回は、エド・ハリスという大御所も起用。二人の並外れた存在感と奥行きのある演技は、映画の醍醐味を感じさせてくれる。


息子二人の演技合戦も見ものだ。フレッシュさと説得力の高さが際立っていて、見ていて楽しい。ショーンの息子、ダニーを演じるボイド・ホルブルックは、今月公開のリーアム・ニーソン主演作『誘拐の掟』にも出演している。ジミーの息子、マイケルを演じるのは、スウェーデン出身のジョエル・キナマン。リブート版『ロボコップ』に出演していた。二人の今後の活躍も楽しみにしたい。

(オライカート昌子)

ラン・オールナイト

2015年5月15日(土)全国ロードショー
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/runallnight/